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1. 異文化コミュニケーション研究所®が考える『未来志向型の日本的経営』

ホームページ開設に添えて

私たち日本人は日々の生活において、直接的に外国を意識することはありません。しかし、ご存知のように石油、ガス、そして食材の輸入なしに私たちは生活できません。そして実は、今では日本の人口の2%は在留外国人です。また戦後日本は、加工貿易大国として経済成長してきたのですから実質は外国と密接に関わっています。

…そんなことは、誰でも知っていることです。しかし、なんとなくは感じていても、多くの日本人は心の中に日本と外国を無意識に『区別』し城壁を築いている。

これから先、私たちが時代に逆行して鎖国をすることは考えられません。むしろより海外との交流を深め、世界における日本のプレゼンスを上げる必要があることに異論はないでしょう。

統計的に、日本の人口は減少しつづけます。これは、日本の経済が徐々に萎縮することを意味します。つまり、日本を市場として捉えている企業の生存競争は段々激しくなり、生き残りが厳しくなっていくことを意味します。そこで企業が生き残るための施策に、より海外を意識することは、選択肢の大きな一つになることでしょう。

その際には、「外なる戦略」と「内なる戦略」が必要です。

いくら海外展開をして「現地化」を目指していても、日本国内の本丸が、日本人マインドのみで仕切られていたら、いずれバランスを崩してしまいます。

大手企業では、取締役に外国人の名前が載っていることが多くなりました。それは、日本人のマインドだけでは、世界を相手に仕事ができないためです。また近年、日系企業でも徐々にですが一般職として外国人が採用され始めています。つまり国籍や背景の文化に関係なく、優秀な人材を「日系企業」が採用するようになってきていることを意味します。

このような背景において今後企業は、国内であろうが海外であろうが、異文化間におけるコミュニケーションが重要になることは明らかです。ビジネス環境の変移は加速度的に進んでいます、昔を懐かしがる余裕はありません。

明確に予測できる未来に対して、今から手を打つ必要があります。すべての会社にとって、人(従業員)は要です。異なる文化背景を持った人たちが交わるから起こるマイナスの問題。異なる文化背景を持った人たちが交わるから生まれるプラスの変異。共にマネージすることが重要になっていきます。

日本人の思考と日本語

思考は言語によって行われます。つまり語彙数の多い人ほど、思考レベルが高く、深く思慮ができる。私たち日本人は、漢字、ひらがな、カタカナを必要に応じて使いこなし、微妙なニュアンスを伝えます。また敬語も複雑です。敬語とは上司、先輩、先生、親等、目上の人に対して使う言葉遣いです。逆に言えば「目下」の者に対しての言葉遣いは日本語には存在しません。

私たちの思考は、私たちの使う「日本語」という言語の特性に大きく左右されています。思考は文化の源です。ある意味、私たちの文化は「日本語文化」なのです。

よく海外の企業では、上司から解雇を言い渡されると2時間以内に退去することが求められるといいます。最近は、日本の外資系企業でも同じようなことがあるらしいですが、基本的にそれが受け入れられるのは「英語文化」があるからで、「日本語文化」の企業の場合には到底受け入れられません。

英語で考えると、従業員の雇用はとてもドライなものになります。ところが日本語で考えると、いろいろな感情や機微が現れてきます。なぜならそういう言語だからです。

今から約25年前、とある日系企業海外現地法人で打ち合わせをしたことがあります。その際、イギリス人も打ち合わせに参加しました。相手はお客様です。日本語であれば、敬語を使い、顔色を見ながら言葉を慎重に選び交渉をすることになり、説得することはとても難儀だったはずです。しかしイギリス人がいてくれたおかげで英語で交渉を行うことができたため、明確に相手の要求に対してNOと言った後、論理立てて提案をすることができました。相手の日本人も英語で思考しているときには、論理的にそして対等な立場で交渉に臨んでいました。

もちろん打ち合わせが終わった後には、日本語でご挨拶しますので、「先ほどは大変失礼いたしました」と、相手の立場を慮る言葉を敬語で伝え、無礼を謝罪を含めながら丁寧に応対して事を収めました。つまり使う言語により思考の仕方も変わるのです。そして、その思考は文化の源になる。

日本語の文法と思考

日本語は「空気を読む」必要のある言語です。

ご存知のように、動詞を最後に持っていく言語が日本語です。つまり、最後の最後まで言葉を聴かないと意味がわからない言語でもあります。

私はあなたを…..。

と言われると、人によっては「愛しています」と想像したり、「憎んでいました」と想像したり、まさにさまざまです。

最後の言葉を聴くまでのほんのレイコンマ何秒という間、相手の顔色や、場の雰囲気を感じ取ること、つまり「間」を読む必要がある、そんな言語が日本語なのです。

そのため、わざわざ言葉にしなくても相手に意味が通じてしまう、海外の人からすれば不思議な現象がコミュニケーションの中で繰り広げられています。

日系企業である場合、日本語を使うのは当たり前です。そこに異文化で他言語を話す人が入り共に仕事をする場合、なぜ私たちのこの日本語からくる文化を理解させなければなりません。そして、それと共に私たち日本人は、彼らの言葉が「空気を読む」間(ま)のない言語を使っていることも理解していなければなりません。

そうすることで、その「間(ま)」の有無から生まれる摩擦は軽減されます。

私たちは、日本人の言語『日本語』に誇りを持つと同時に、この言語のすばらしさを世界に発信するくらいの意識を持つべきです。それをすることで、実は「英語アレルギー」の人は減っていきます。なぜなら、自分の言語が優れているという気持ちが持てるからです。そして別の言語を持つ異文化の人に対して、妙な劣等感を持たずに会話ができるようになれる。

たとえば、「雪がしんしんと降る」という言葉。

このしんしんとは、深深と書き、ひっそりと静まりかえっているさま。奥深く静寂なさまをさします。つまり、日本語では音のないものに音をつけてしまう。それだけ繊細に自然を見つめ、慈しむ日本語を生んだ日本人。誇ってよい文化です。

日本で働く外国人従業員(Global Force)は、異文化の環境に育ち、異なった言語を使います。そのため、私たち日本人の背景にある日本語という言語に裏打ちされた文化を知らずにいます。くどいようですが、それらを丁寧に教え、理解してもらうことが何よりも異文化コミュニケーションには大切です。

海外戦略における意識改革

古典的なグローバル戦略の基本的な考え方は、ある製品を作り、ある地域(国)で販売する。ある程度その地域で売れたら、その製品を低グレードなものに作り直し、発展途上国向けに安い価格で販売していくというものでした。

それはそれで成功してきた。なぜなら、彼らは比較にならない程貧困であったこと、ある意味「味よりも量」を求めていたからです。

ところが、現代の先進諸国は自国のマーケットの成長性に翳りを感じ、その代わり発展途上国を「成長市場」と考えるようになってきました。そのためそれらの発展途上国に投資をし、経済成長を後押ししてきました。元々、経済規模が小さな国ですので、その影響はすぐさま一定の層の人々の所得を増やし、徐々に購買意欲が高まってきました。さらに最近のITの進歩により情報がほぼ世界中で均一化されてくると、それぞれの地域(国)における「趣向」が現れるようになってきました。

その「趣向」は、地理、宗教、文化、気候等の背景が複雑に絡み合い、遠くで見ていては、その現場の実情はまったくわからない。

グローバル化というと、すべてが均一化されたかのような錯覚を受けますが、それを語る人が、現場から遠く離れ、遠くから眺めているからです。実はさまざまな色がランダムに入り組んでいる。

その事実を明確に認識することが、今後の事業展開には求められています。

つまり、それぞれの地域(国)に向けて、商品もサービスも「最適化」されることがより大切になり、単純に物さえあれば売れるというものではなく、先進国と同様に発展途上国でもお客様に喜んでもらえないものは、売れないということになります。

一般的に海外戦略を行う場合「現地化」すると言いますが、「どの部分」を現地化するのでしょう?製造ですか?販売ですか?設計ですか?人事ですか?….

そして親会社の日本企業は、どのように「現地化」した先を、管理、運営していくつもりですか?

その答えは、それぞれの会社がどのような背景、歴史、人材、製品(サービス)、資金等々を持ち、何を求めるのかによって千差万別になりますが、多くの会社はその「現地化」の定義が不明瞭なまま突き進み、多くの問題を抱え、場合によっては撤退を余儀なくされます。

まずは会社にとって「現地化」を明確に定義することが重要です。

そして、その定義が明確になったら、最良、最善、最大の結果を生み出すための「意識改革」が必要になります。

『海外戦略には「現地化」が重要なのは理解できるが、なぜその上「意識改革」まで必要になるのか?』と疑問に思われるかもしれません。しかし、実は会社の「意識改革」なくしては海外戦略の成功はおぼつきません。

なぜ「意識改革」が必要なのか…。その最大の理由は、私たちは外敵から隔離された非常に恵まれた日本という環境の中で、日本民族独特の進化をしてきたことにあります。ガラパゴスジャポンです。

私たちが「海外」という言葉を使う場合、漠然と「日本以外の国々」を一まとめに考えています。つまり、「日本という国」と「それ以外」です。しかし、現実には「それ以外」の中には、多くの民族、多くの文化、多くの人種、多くの言語があるのですが、私たちはそれらをすべてひっくるめて「海の向こう」と考えてしまう。

実は、それが日本人の「国際ベタ」の最大の原因なのです。

それゆえに、時として日本人は奥手で、引っ込み思案だったり、外国語を操って交渉することが苦手だったりする。

このような状況を打開し、未来志向の日本の会社を築き上げるには、初めに私たちが変えなければいけないのは、「日本文化は特別、独特である」という自意識をなくすことです。日本の文化も、他の地域の文化も、優劣も上下もなく、すべてが特別で、すべてが独特なのです。日本文化だけが特殊なものであるという発想を捨てなければなりません。

そして、そこから異なる文化を認識し、対等にその「差」を意識する。その「差」を意識さえすれば、最適な解になるかどうかは別ですが、最悪の解になることはありません。

さらに言えば、外国の人たちを日本の会社において「現地化」させることが、これからの日本の会社の課題にもなります。

日本の労働者人口は、毎年40万人ずつ減少し、2060年までに1,170万人減ると予想されています。ちなみに、日本第二位の都市横浜市の人口は約370万人ですから、約9年で横浜に住んでいるすべての人たちと同じ数の人たちが働かなくなるのと同じです。また、人口自体も2030年までに1,000万人が減る。

労働者は、小さなポンプのようなものです。給与を貰い、それを使う。お金を回すポンプです。それが、日本経済を回しているのです。つまり、労働者が減れば経済の規模が縮小していくことになります。また拍車をかけるように、年金生活者となった彼らの生活を支える負担を、少ない労働者が背負うことになるのですから、日本経済はダブルパンチを食らったのと同じです。この事実を明確に意識しなければなりません。

労働力を補うという目的で移民を受け入れよう!などということは言いませんが、少なくとも優秀な外国の人たちが日本で一生懸命働き、幸せに暮らすことで、日本の経済を回すポンプの役割を担ってもらうことは、マイナスではありません。そして、日本の会社をより世界貢献できる器に成長させる。

これは、海外戦略の一環としても考えられます。
進出したい国の優秀な人を雇用し、日本で数年間共に働き、帰国後は現地の要となって働いてもらうこともできるからです。

意識改革により、環境に適応できる能力を高めなくてはなりません。

報酬

社会主義においては労働の対価は、仕事の質や内容に関わらず一定に支払われました。そのため勤労意欲は失われました。その対極にあるのが「成果主義」です。成果主義の場合、成果の上げられる人には無制限に報酬が支払われる一方、どのような事情であれ成果の上げられない人には少ない報酬しか支払われない。

人間のモチベーションを上げるのには「成果主義」は最適のシステムのようにみえますが、そんなに単純なものではありません。論理的にはそうであっても、そんなに簡単に人の世の中は整理できません。極端に言えば、注文を横取りしたとしても、成果を上げた人には報酬が支払われてしまう。また晩成タイプの人の芽を摘んでしまうことになったり、仲間同士で僻みや妬みを生むことにもなる。

日本人は農耕民族であると言います。農耕とは、狩猟とは違い、一人の力ですべてを完結することはとても難しい。多くの人が協力し合い、共に働き、収穫を待つシステムです。誰かが耕してくれたから、種を植えられる。誰かが水を上げてくれたから収穫ができる。その文化の上には、成果主義という発想はありません。一種「成果等分方式」とも言えます。誰かがサボることで一族が滅びることさえありえるのですから、皆が一生懸命働く。
「成果等分方式」には競争はありません。現代社会のように、勝ち残らなければ生き残れないのと違います。そのためいくらDNAが農耕民族だからといって、農耕民族的な発想だけでは生き残れません。

ましてや、これからはグローバル化に伴い、競争はさらに熾烈になることでしょう。その中で「生き残る」ためにはどうしたら良いのでしょう?

その一つの回答は「貢献度型成果分配方式」です。
収穫物を分配はするのですが、直接的に注文を獲得した人のみが成果として得るのではなく、同じ部署の仲間や、間接部門等とも分かち合うというものです。つまり、皆が多くの収穫を得るようにそれぞれの部署で努力するが、その分配は貢献度に基づくので誰もがモチベーションを持ち、貢献度が高い人に対しては、仲間からの僻み妬みではなく、賞賛が送られるものです。

特に、異文化を背景にした従業員に対しては、より詳しく理解をさせることが重要です。またそれが理解できなければ、従業員としては不適切な存在になってしまう。

日本に永住する考え方を持たない限り定年までの長いスパンで会社に貢献することを、海外からの従業員は考えません。つまり限られた期間の中で、より多くの報酬を求めることになります。そのため、モチベーションを維持し、組織の一員として協力的に働かせるためには、成果の分配の理解が重要になります。

人材確保

人材確保が企業の生き残りを左右します。優秀な人材が企業の未来を左右する。

日本が”Japan as No.1″ともてはやされていた1980年代。日本人は外国の人たちに”Economic Animal”だと揶揄されていました。それでも、戦後30年たらずで世界第二位の経済大国になった誇りが日本人にはありました。だから、ある意味悪い気はしていなかった。

そして、当時の日本人は「坂の上の雲」を追いかけるように、ただひたすらに山を駆け上っていたとも言えます。それは、所得を増やしたいとか、会社を大きくしたいとか、そんな明確な目的地はなく、働くこと自体が幸せだった時代だったともいえます。

“Success is not the destination. Success is Journey.”

当時の日本人は、お金を目的にはしていなかった。働けばより多くの収入が得れるという喜びがあった。

働くとは、楽しいことです。労働が苦役なら、世界中の大人は全員が不幸ということになるでしょう。働くことで自己実現を果たし、社会貢献をし、人の役に立ち、新しいものを築き上げる。そして、働くことで家族を養い、子供に教育を施し、生活の安定を得る。働くことは未来を切り開く手段なのです。

人は材料ではありません。つまり「人材」は誤りで「人財」です。
材料は使うものですが、財は築き上げるものです。

会社の持つベクトルに共感し、共に働く意思を持つ人であれば、日本人だけにこだわることなく、優秀な人財を登用し、育む。それがこれからの時代必要になっていきます。

優秀な人を確保するために、高待遇はモチベーションをアップする一つではありますが、それは「人財確保」には繋がりません。待遇が帰属意識を高めるはずはないのです。

これからの「人財確保」のためには、かつての”Japan as No.1″だった頃の日本と同じように、はるか彼方に見える目的に向かってがむしゃらに走る「強いリーダーシップ」と、「くじけない目的意識」を経営者が持つことが何よりも大切です。

 

2015年1月1日

異文化コミュニケーション研究所®
所長 島崎ふみひこ

2. 隣にいる外国人、彼らなしには生きられない日本人

既に日本にはたくさんの外国人がいます。都心の電車に乗って、外国人と遭遇するのは当たり前ですし、コンビニのレジではかなりの外国人が働いています。そして、深夜から早朝にかけてのお弁当の盛り合わせは、ほとんどが外国人がやってくれています。

 

気がついて見ると、日本は外国人労働者がいないと成り立たない国になっているのかもしれません。でもおかしいですよね、政府は単純労働者の受け入れを現段階で認めていませんが、その若者たちはどうして働けるのでしょう?

 

実はそこには「からくり」があります。日本に来ている留学生は「資格外活動」の手続きさえすれば、原則週28時間の労働が認められ、さらに長期休暇の場合には1日8時間、週40時間まで働けるからです。

 

ちなみにアメリカでは、留学生のアルバイトはかなり厳しく、学校内の条件付きで週に20時間までとなっています。また、学校内で働ける場所は非常に限られているため、働きたくてもその枠がないことが良くあります。それと比べて、どこでも働ける日本の法律はかなり「ぬるい」と言えます。大体、雇用主がチェックできるのは、その職場での労働時間だけですから、複数アルバイトを掛け持ちをしている留学生の場合、彼らの自己申告を信じるしかないためです。

 

特に語学学校や専門学校で日本語を専攻している留学生は、勉強をしに来ているのか、働きに来ているのかわからない学生も多数います。発展途上国からの留学生の多くは、借金をしてまで日本に来ている学生も多く、留学生が仕送りをしているケースも多数あります。たとえばミャンマーの平均賃金は月約4万円ですから、アルバイトの時給1000円x28時間x4週で換算してみると112,000円の収入となり、母国にいる家族を充分に養うことができます。また長い夏季休暇、冬期休暇を含めれば、アルバイトだけで相当な収入です。

 

ところが日本での生活費や、語学学校・専門学校の学費も安いものではありません。そのため自転車操業状態に陥り、当初掲げていた高い理想は消え失せ、日本語も上達せず、日本で正社員働くことの夢も実現できない…そんな留学生が多数います。

 

留学生の数は既に20万人を超え、政府の2020年までに留学生を30万人にする「留学生30万人計画」はほぼ達成の見込みです。この裏には、多くの語学学校、専門学校が留学生なしには、経営が成り立たないという悲痛な事実もあります。

 

もちろん人手不足で困っている産業界も絡んで、「留学生、学校、産業界」三つ巴の持ちつ持たれつの微妙な関係で成り立っているのが現状です。

 

たしかに《学生ビザ》の場合、学校を卒業したら帰国することが条件になっていますから、長期滞在のリスクは少ないのは事実です。ところが「技能実習制度」で来日した外国人が2016年だけで5,800人以上失踪していることから(累計17,000人以上)、彼らがまだ日本にいれば不法労働者です。それと同じように留学生が残ってしまう可能性もあるので、大きな社会問題となっていくことになります。

 

今はまだ良いですが、抜本的な対策を講じる必要がでてくることでしょう。安易な労働力の輸入は大きな禍根を残します。

 

一方で、先ほどの「留学生30万人計画」に基づき、かなりの税金が使われています。平成21年度を見ると680.6億円(補正予算含)が使われています。そして、政府は「高度外国人」として日本企業で働いてくれる可能性の高い、優秀な留学生の就活支援を行なっています。

 

具体的には、文部科学省の「留学生就職促進プログラム」があります。外国人留学生の定着を図るとともに、日本留学の魅力を高め、諸外国からの留学生増加をめざしますというもので、日本中で12拠点、各25百万円/年、最大5年間、総額15億円の予算です。
労働人口の減少は、ボディーブローのように日本経済に深刻な陰をつくる。そんな危機感が政府にあるのでしょう。

 

 

生産年齢人口(15~64歳)という指標があります。2013年現在では約7,883万人いましたが、2060年に約4,418万人まで大幅に減少する見込みです。つまり約3,465万人が減ることになります。数字だけでは規模感が分かりずらいので、東京の人口と比較してみます。東京の人口は1,362万人ですから、空恐ろしい程の数字です。

 

AIやロボットがどんどん進化するにしても、徐々に、徐々に労働人口の減少による影響は出てくることでしょう。2018年現在で、既に大卒求人倍率は1.78倍となり、バブルの時期を上まっています。大手企業でさえ、求人が難しくなってきているのですから、中堅・中小企業ではさらに採用が難しくなっていくことでしょう。

 

その穴埋めをするために、優秀な留学生に残ってもらいたいのだと思いますが、日本企業のほとんどは、一部の企業を除き《及び腰》です。

 

日本に来る留学生の多くは、日本の生産技術や環境浄化技術、さまざまなハイテクを学びたいと思っています。またアニメや柔道・空手、歴史に裏付けされた日本文化に憧れてくる学生が多い。とても親日家です。

 

ところが、彼らが就職したいと思っても、採用をしてくれる企業は多くありません。その歪はとても大きい。就活に失敗した留学生の多くが、日本を嫌いになるとも言われています。

 

産業界側からすれば、採用が難しいとはいえ、なんとか対処できる範疇のため外国人まで雇う必要性がないというのが、本音なのだと思います。

 

また雇おうと思っても、すべてが日本人向け仕様で作られている会社の仕組みに手を付けることはとても大変な作業です。中途半端にそんな状態のままで外国人を採用しても、お互いに不満を残して辞めて行ってしまいます。

 

このように日本人を採用できないという消極的な理由では、この問題を解決することは現段階では難しいでしょう。

 

 

 

ダイバーシティという言葉があります。(Diversity:多様性)

ビジネス的には、多様な人財を積極的に活用しようという考え方のことです。さまざまな多様性(性別、人種、年齢、性格、学歴、価値観など)を受け入れ、広く人財を活用することで企業力を高めることを目的としています。均一で同質の考え方しかできない人財ばかりの組織では、先が読みづらく、変化の激しい現代を乗り切ることは難しいものです。また、そのような組織では斬新なアイディアを出すこともできない。変化に適応することができない、そんなリスクを多くの日本企業は抱えています。つまりダイバーシティを活用できない限り、企業の命運は尽きるということでしょう。

 

積極的にダイバーシティを取り入れていく、そのような決断を早めに行った企業が生き残っていきます。日本企業には今までなかった「新たな試み」のチャレンジです。多様なものをマネージできるようになるには、時間が掛かります。失敗を繰り返しながら、企業内でノウハウを築き上げるしか方法はありません。

 

さまざまな課題がありますが、まずは日本企業は準備をする心構えを持つことです、これはトップにしかできません。そして、具体的な対策を講じていくことが重要です。

 

どんなに優秀でも、日本人と同等に日本語を書いたり話したりすることは外国人にとっては難しいものです。また、日本的な評価制度があいまいな昇給・昇格は、一生を日本で過ごさない外国人にとってはデメリットでしかありません。そして英語が全く話せない職場はコミュニケーションが活性化しません。

 

かといって、準備を充分にしてから受け入れる必要はありません。その仕組み自体も、採用した後に少しずつ整えていくので良いのです。どんなに準備しても、初めから成功するなんてことはありません。それならば、早く慣れることです。ダイバーシティを会社の礎にすることは時間が掛かります。

 

日本の未来を、一人一人がイメージすることで、問題は解決することができます。

 

異文化コミュニケーション研究所(R)
所長 島崎ふみひこ (shima@globalforce.link)

2018.3.1.

3. 外国人留学生の採用・活用についてのアンケート結果

調査の趣旨
《異文化コミュニケーション研究所(R)》は、日々多くの優秀な外国人留学生と接しています。彼らには日本人学生とは違った、頭脳・才能・積極性があり、日本人の私たちには計り知れない可能性を感じます。


ところが多くの日本企業は、ダイバーシティ(多様性)の有用性を認識していても、「長年の慣習」と「漠然とした不安」から、まだまだ彼らに門戸を広げずにいます。


今回のアンケートは、調査対象を「既に外国人を採用している企業」並びに「外国人の採用を検討している企業」に絞り込み、それぞれの企業のニーズや現状から、日本企業における外国人留学生の採用・活用実態を明らかにするものです。

 

有効求人倍率がバブル期を抜き1.48倍となり、年々、優秀な人財の確保が難しくなっています。また、すべての業界でグローバルな競争に直面している中、このアンケートは日本企業におけるダイバーシティ採用・活用の方向性を占うものです。

実施期間 :平成29年7月13日(木)~8月31日(木)

調査対象:外国人留学生の採用を検討している企業 298社

『アンケート調査報告書』 平成29年10月17日

4. 西欧と日本の労働に関する捉え方

毎日新聞「働くとはどういうことか」は、歴史的な視点で、西欧と日本の労働に関しての捉え方が整理がされており、とても有用な資料です。

 

日本が今後、多くの高度外国人財を西欧からも採用・活用していくにあたり、この歴史的な労働観の変化を理解しておくことで無用な摩擦を避けることができると共に、私たち日本人も時代と共に労働観が変化してきたことを知っておくことで、これから外国の異文化との融合により新たな労働観が生まれてくることを受け入れることができます。

​下記に内容のポイント並びに、参考資料を添付致します。

【西欧】
1.古代ギリシャ:
労働は卑しいもの
 ギリシャ神話:神の罰とする労働起源
2.初期キリスト教・ユダヤ教(『旧約聖書』創世記)
       :
労働は「原罪に与えた罰」
3.キリスト教『新約聖書』
       :
働こうとしない者は、食べることもしてはならない
4.中世・キリスト教
       :
勤勉な労働が魂を救済する
5.産業革命時代(18世紀半ば)
       :
「良い仕事」と「悪い仕事」
6.20世紀      :「人間中心」の労働への関心が高まる
7.21世紀   :働くことの意味は「自己実現」にある

 

【日本】
1.日本人の職業倫理(江戸期から確立)
2.明治初期の日本人は「勤勉ではない?」
3.明治中期以降の日本人は「勤勉を植え付ける教育」


労働には精神的な「意味」が必要
○古人は額に汗して働けといったが、ただ衣食住を満足させるだけの労働なら虫けらでもやっていること、それで満足する者には人間としての進歩がない。(福沢諭吉『学問のすゝめ』)
○人はパンのみに生きるにあらず。神の口から出る一つひとつの言葉で生きるものだ(『新約聖書』マタイ伝)

人間の労働には何らかの精神的な「意味」が必要です。掘った穴をまた埋めるような同じ作業をくり返す「達成感」のない仕事は、人間にとっては拷問同然となります。ナチの強制収容所における体験(『夜と霧』)で精神科医のV・E・フランクルは、収容所の苛酷な労働環境に耐え、生き延びることができたのは、屈強な身体を持った者たちではなく、「生きる意味」を持ち続けていた者だった、と書いています。

 

毎日新聞「働くとはどういうことか」より抜粋

 

労働の捉え方(資料)

 
 
 
 
 

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