
Short Message
《2021年》
1.高度外国人向け教育プログラム

子供の頃から私たち日本人は、親や兄弟、近所のおじさんおばさん、学校の先生、先輩から、日本人としての心構え、日本人としてどのように生活したらよいかを、知らず知らずに学んでいます。
特に「叱られ方」は、とても重要な要素です。
最近は、それでも「親にも叱られたことがない」といった、変わった人もいるようですが、そういう従業員って正直、扱いに困りますよね。外国人の場合には、それに輪を掛けた状態だと考えてください。
また、いろいろな事柄の中で、何が「重要」なのかについて外国人も理解はしていますが、重要な要素の中の《プライオリティ》が異なっていることがよくあります。それが理由で、日本人の上司からすると、全く想定外の「トラブル」が発生したりするものです。
さらに、気を付けるべき教育は、『上司』の教育です。
外国人の部下をどう教育したら良いのかを、新たに学ぶ必要があります。
知識を付ける教育なら、一回で十分かもしれませんが、体得するまでにはいきません。
定期的に、じっくりとコミュニケーションを取るプログラムを作る必要があります。
よく勘違いする企業があるのですが、彼らを「日本人化」させるのか教育の目的ではありません。彼らの多様性を損なわないように、日本人の同僚とシンクロしながら仕事ができるようにすることが何よりも重要です。
教育プログラムの出来具合で、ダイバーシティが輝くか、埋もれるのか大きな差が生まれてきます。
2.同僚からのクレーム

多くの優秀な人財が、民間企業ではなく、公務員として働く最大の理由が、安定にあります。民間に比べて、多少給与が安くても、よっぽどのことがない限りクビになることはありません。また、同期との競争や、成果による評価と違い、昇進試験ですべてのランクが決まるため、あくせくせず、自分の待遇について「ほぼほぼ納得」しています。
同様に、民間企業でも、同期入社の連中はどんなに能力差があっても、数年間は全く同じ扱いを受け、全く同じレベルの仕事をすることで、同期の皆が【仲間】であり、協力し合う意識が育まれます。これにより、日本企業は『底力』を持ち、困難を乗り越える『パワーの源』となってきました。
そんな企業文化が当たり前の日本企業に、多様性を根付かせることは、これからの時代に成長をしていく企業にとって必要不可欠な【要素】となります。
【仲間意識】とどうバランスを取りながら、ダイバーシティを生かしていくのか、個々の企業が試行錯誤を繰り返しながら導き出すもので、正解はありません。
ただ、多くの失敗例から学ぶことはできます。
日本企業が、再び”Japan as No.1”と呼ばれるようになる大切な道のりです。
3.強すぎる自尊心

アメリカの大統領選、トランプ氏が敗北し、バイデン氏が2021年1月20日に就任しますが、アメリカ中が厳戒態勢に入っています。トランプ大統領の敗北を認めたくない人たちが暴徒となって式典や議会を襲撃するという危惧が高まっているためです。
日本は基本的に「日本人」の国で、民族的な差別は存在しません。そのため、私たちにとっては人を分断する「見えない壁」に気が付きません。教育も平等、医療システムも平等の日本、平等が世界中当たり前だと思っているかもしれませんが、現実は全く違います。
生まれが極貧であったり、疎外を受けてきた経験を持ったりすると、反骨精神だけでなく、心の奥底に深い傷を負ってしまうようです。虐げられないためには、勝ち抜くしかない、いつか見返してやる...。そのような人が、優秀な成績で卒業すると、今度は「見下す」相手を探す傾向にあるようです。また、「見下された」と感じると敵意をむき出しにしてくることがあります。
私たちにとっては「見下す」気持ちはなくても、相手にとっては「見下された」と感じられてしまうと、鋭い言葉の刃でこちらを襲ってくる。
これって誤解ですよね。
仲間であること、安心しても大丈夫だということ、じっくり伝えて下さい。
4.金の卵の産ませ方

「期待外れ」という言葉を時々耳にします。
折角、外国人を雇ったのに、何のメリットもない。外国人だから、面倒な手続きが多く、言葉もうまく伝わらなくて、なんのために採用したのか...。
《相手から愛されたいなら、まずはあなたが愛さなくてはならない》
特に準備をせずに、不足している日本人の「代わり」として高度外国人財を採用した企業にありがちな傾向なのですが、外国人が《金の卵》を産むような環境になっているでしょうか?
人それぞれに、考え方も、行動の仕方も違うのは、外国の人も同じです。一人一人の個性を理解し、最適な対応を取っているでしょうか?「外国人」という一つの括りで理解して、型にはめようとしていませんか?
大切なことは、一人、一人が持っているポテンシャルをうまく引き出し《金の卵》を産んでくれるようにすることです。
それが分からなかったら、良く話し合い、様々な経験をさせながら、一緒に探すことです。
その「道のり」自体が、実はゴールデン・ルートです。
5.低いモチベーション

朝一番に飲むコーヒーが美味しくないと、一日気分が乗らないものです。
これから育てようと思っていた外国人従業員の言葉から、会社や教育方針についてバカにされたような言葉が発せられると、どうして良いものか分かりません。腹が立つと言うよりも、落胆です。
気持ち、わかります。
でも、重要なことは、話を聞くことです。それも、徹底的に。なぜ?、何が?、どうして?を、少しづつ深堀していくことです。そこで注意しなくてはならないのは、底に着くまでは絶対に「君は、何がしたいのか?」を聞いてはいけないことです。
底に到達する前に聞いてしまうと、表面的な「現象」に対処するようなもので、「原因」にまで到達できず、仮に今見えている「現象」を解決しても、別の「現象」が現れてしまい、解決できないためです。
大切なことは、心の底にあるとてもシンプルな「欲求」を本人にも理解させることです。
琴線に触れることさえできれば、能力のある人間は、開花します。
6.信用しても信頼してはいけない

大学でどんなに成績が優秀でも、正解のある世界での話です。
ところが、実社会は全く別の世界です。常に不十分な情報と、足りない予算、足りない時間、協力的でない仲間、複雑な利害関係、等々様々な障壁があちらこちらに隠れていて、その上【回答】は出来たとしても、満足のいく《正解》になるとは限らない...。
育ってきた文化の違う外国人従業員を活用する場合、より多くのセーフティーネットを準備しておく必要があります。中途半端に信用だけして、すべてを預けるというのはとても危険です。
外国人従業員も悪気はありません。ただ、人知を超えた外的要因(彼らの言い分ですが)は、自分の責任だとは思っていないだけです。つまり、自分は責任を負う必要がないのだから、そこまで責任を負わせるのはおかしいと思っている訳です。
え?!と思われるかもしれませんが、「可愛い子には旅をさせよ」です。多くの小さな失敗を積み重ねることで、学んでいきます。皆さんの手はお釈迦様の手です。孫悟空がどんなに暴れても、お釈迦様の手の内であれば、大きな問題はありません。修行を重ねることで、いずれ立派な人になるものです。
7.それぞれの事情

とある会社さまから「国へ帰すのなら会社を辞めます」と言われて困ったという相談を受けたことがあります。会社の計画では、日本で仕事を覚えて、現地法人で事業を展開してもらう予定だったそうです。
日本人の傾向として、外国人従業員は「母国へ帰してあげる」という意識があるようなのですが、これは誤りです。このように、喜ばれるどころか、退職理由になることさえあります。
既に彼らの頭の中は、グローバルなのです。
たとえ中国出身の人でも、優秀な人財だったら、アメリカでも、ヨーロッパでも駐在をさせて下さい。もう「母国」という発想は辞めるべきです。どこの誰であったとしても、そんなことは仕事とは関係のないことです。能力を正当に評価する。その意識を持って下さい。
また、家族が日本で馴染んでいるのに、わざわざ帰すというのも酷なものです。場合によっては、会社に対しての信頼感を損ねることに繋がるので注意してください。ただ、話し合うことは悪いことではありません。駐在に拘らず、長期出張という方法もあるでしょうし、本人のキャリアにとってとても意味のあることであったら、家族も納得してくれるかもしれません。
外国人従業員のリアクションに、一喜一憂するのではなく、丁寧に説明し、親身になって話し合いをすることで、誤解を生まず、お互いが納得した道を探すことができます。
8.OJTという名の雑務

ほとんどの日本人の新卒社員は、まだ「青い果実」です。食べたくても、まだ甘くもないですし、硬い。ところが、高度外国人財に属する人たちは、既に「食べごろ」です。
彼らは、採用された理由に「即戦力」が入っているものと、《勘違い》しています。
多くの日本企業は、業務内容や職務も、それぞれの会社で異なっているため、しばらくはOJTという名前で、上司の「小間使い」「雑務」をしながら、見て覚えろ的な仕事をことをさせるものですから、新入社員に「即戦力」なんてあると、逆に困ったりしてしまいます。
でも、台所のテーブルには「熟れた果実」が置かれている状態が、高度外国人財です。放置しておけば、あっという間に熟しすぎて腐ってしまいます。
それはもったいないですよね。桐の箱に入って来た「高級なメロン」を食べずに放置するようなものです。
そうさせないためには、何をしたら良いのか? そうです、届いたらすぐに箱を開けて食べられるように、お皿とナイフ、フォークにナプキンを準備しておくことです。
考えてみれば、人件費を無駄遣いしているのが日本企業です。入社した従業員を1年も2年も、価値を創造させることなく、保管しているのですから...。
さて、会社にとっての「お皿とナイフ、フォークにナプキン」とは何でしょう?一緒に考えませんか?
9.日本の福利厚生

新しい生命の誕生は、皆でお祝いしたいものです。
未来を築き上げることができるのは、子供たちです。
ジェンダーの平等と言われていますが、男性の私からすると、赤ちゃんを産むことができる女性を、わざわざ産むことも出来ない男性のレベルにまで「引き下げ」なくても良いのでは?と思ったりします。
ただ女性は大変ですよね。出産は命がけの面もあるし、ある程度の年齢になるまでは授乳だけでなく、目を離すことさえできません。そのため、会社で仕事をするという視点からだけで見ると、どうしても「不利」です。
ただ、この価値観も徐々に変わっていきます。期せずして『コロナ禍』で、リモートで仕事をすることができること、拘束時間ではなく、成果で評価を得ることができる世の中になってきているからです。
タイムカードを押してさえいれば、居眠りをしていてもお給料を貰える、誰にでも平等(?)な世の中はおしまいです。
高度外国人財の、「高度」とは能力が高いという意味です。つまり、会社と本人が明確な目標を一緒に決めて、それを達成することで評価を得るという仕組みさえ取り入れれば、その「高度」な能力を遺憾なく発揮することができるのです。
単に福利厚生の一環としてしか考えていなかったことが、より大きな環(わ)としての広がりを持つきっかけになるかもしれません。
10.旧正月

家族を大切にする文化は、中国だけでなく、ラテン系の国でもとても顕著です。一族が集まると数十人になるというのもざらです。
家族は、心の拠り所です。異国の地で働いている子供が、里帰りすることを心待ちにしているご両親の気持ちを思うと、年に一度の『旧正月』はとても重要だと言うことがわかります。
すべての業種で、できるとは思えませんが、全員、喜んで返してあげるできです。それどころか、会社としては、大切なご子息・ご令嬢に頑張ってもらっていることに対して、ご両親に心から感謝とお礼を伝えることが大切です。
それこそ、ご両親に心のこもったプレゼント持たせるくらいの気持ちがあっても良いと思います。高価な品物でなくても、ビデオメッセージでも、働いている仲間と一緒に写っている写真集、地元のお菓子、何でも「心のこもった」ものなら良いものです。
ちょっとしたことが、「従業員やその家族」と「会社」との心の絆になるものです。
でも、「一斉に返す」なんてできない会社だってあるはずです。そんなときには、どうしたらよいでしょう?
これは、皆さん、一人一人が、真剣になって考えるところから始めなくてはなりません。私たちは、アドバイスはできますが、皆さんの「心」の代替はできないためです。
従業員を大切にする会社は、心温まる仲間たちと一緒に頑張れる会社です。
11.家族手当

アジアの人たちにとって、家族は私たち日本人が考える以上の存在のようです。「従妹(いとこ)の子供が小学校に入るからお祝いを上げるんだ」という話を聞くと微笑ましいのですが、従妹の数とその子供たちの数を聞くと『驚いて』しまいます。
それに一族の中の「日本で働く輝かしい存在」には、様々な『出費依頼』が来るようで、日本的な冠婚葬祭のレベルを遥かに超えているようです。外国人の伴侶を得たことで、生活苦に陥ってしまった...。そんな話も世の中にはあります。
でも家族がいるから、心強く、幸せになれることも事実です。ですから、そんな彼らに対して、出来ることはしてあげたいものです。ある会社さんでは、何年間かに一度は帰国費用を出してあげるところもありますが、「外国人だけ特別」思われたら大変でしょうから、一方で日本人従業員たちとからコンセンサスを得ることも重要です。
従業員の幸福は、会社の幸福につながると考えれば、会社は時代に合わせて、出来うる範疇で、さまざまなことをしていくことが、これからは必要になっていくのではないでしょうか。
12.日本語難しい

日本語ができないご家族、日本語ができない子供にとって、日本という国で生活することは不安でしかありません。そんなときには、会社が手助けをしてあげること、それも、相談に「来られてから動く」のではなく、相談を「受ける前に動く」ことが大切です。
ただ、会社も人員的に余裕があるとは限りません。そんなときには、母国のコミュニティを探して相談してみましょう。既に先輩たちがたくさんいるはずです。ただ、その時には単にお願いをするのではなく、きちんとそのコミュニティへの「支援」を忘れないようにしてください。彼らは、ほぼほぼボランティアですが、その彼らに手伝ってもらうのですから、人情ってものです。そういう輪が大切です。
この国は、日本人だけの国だと思っているかもしれませんが、それこそ中大兄皇子の時代を思い返してみると、唐によって滅ぼされた百済から「命かながら」たくさんの人たちが日本に移住して日本の技術や文化の礎を築いています。
数百年後、私たち日本人はきっと、多くの国からやってきた優秀な人財によって、私たちが想像もできないような素晴らしい国になっていることでしょう。
13.お料理交流会

海外で生活をした人は、日本では簡単に手に入る食材が現地のスーパーに売っていないため、困った経験がある人も多いのではないでしょうか?鍋をしたくても「ネギ」がない。白菜なんてもっての他。すき焼きをしたくても、「ステーキ肉」しかない。皆さん苦労しながら『日本の味』を求めます。
それと同様に、海外からやってきたご家族は、日本国内では手に入らない香辛料やお肉、野菜がない中、『母国の味』をなんとか出したいと苦慮していることでしょう。
『母国の味』を、お世話になっている日本の人たちに食べてもらいたい。そう思うのは自然な気持ちです。同時に、私たちも『日本の味』を覚えてもらいたいと思うものです。
そういう交流は、会社の枠を超えて、社会を幸せにしてくれます。季節ごとに、「お料理交流会」を開催したいものですよね。
因みに、すき焼き(しゃぶしゃぶ)用の肉が欲しいときには、肉の塊を買って、ハムを切る機械(スライサー)で、出来るだけ薄く切るようにお願いをすると、何とかなります。海外の人は、肉の筋目にまで気が利かないので、日本のお肉ほど美味しくはないのですが、それでも海外では「ご馳走」になります。(笑)
14.美味しいでしょ!

異文化というものは、「異なる」という字が入っていることから分かるように、違うものです。違うものは、慣れていませんから、「驚き」や「違和感」があります。
私の記憶では、最も慣れなかった「違い」は、インドネシアのお手洗いです。
便器の横にある「水道のホース」
これ以上の説明はしませんが、いくら暑い国とはいえ、水で、ホースで、紙なしで...
でも、慣れというものは恐ろしいものです。別の話にはなりますが、シンガポールの「酢漬けのグリーン・チリ」って食べたことありますか?駐在して直ぐの時には、なんでこれが「おしんこ」代わりなの?!と叫んでいたものです。(翌日の朝、大変でした...(f^^;))
ところが、2年間の駐在生活でいつの間にか、病みつきに...。
いずれにせよ、お土産だからといって、無理する必要はなく、嫌な顔をしてはいけませんが、正直に「苦手」だと伝えた方が、結局長い目で見ると、仲良くなる秘訣です。
15.うちでは、もう無理…

初めに申し上げます。初めて高度外国人財を活用する企業の皆様、覚悟下さい。
どのような覚悟か、イメージ的には『1000ピースのジグソーパズルを、見本がない状態で完成させる』覚悟です。
簡単にできる場合もありますが、大変!とっても大変かもしれません。
ただ、すべてのピースが揃っています。根気と、楽しむ余裕、そして時間があれば、必ず完成できます。完成したときの達成感は、とてもとても大きい!
知的なゲームだと考えて下さい。
日本語が流暢な人なら別ですが、一定レベルで英語でのコミュニケーションを必要とする外国人の場合、「橋」と「端」と言ったレベルの混乱でさえ起ります。まるで、一休さん状態です。
言葉と文化は深く関わっています。言葉の習熟度と文化の理解度は比例しているので、入社後、長期にわたり、会社は外国人従業員に対して日本語力を向上させる教育をすることを必ず行ってください。
お勧めは、採用する前に事前準備をすることです。でも、特に準備もせず普通に日本人と同じように採用してしまった場合、初めての育児と同じように、新米パパ、新米ママの気持ちになって下さい。「なんで夜泣きをするの?」「なんで急に熱を出すの?」「なんで言葉が遅いの?」と悩みながら、経験を重ねながら、親自身も成長する気持ちでいくしかありません。
ま~、安心してください。経験者はいます。解決策も、いろいろとあります。
困ったら、異文化コミュニケーション研究所を思い出して下さい。(笑)
16.帰国したら、起業したい…

図々しいと感じるかもしれませんが、『退職したら自分が代理店を行いたい。どうでしょう?』といった、とんでもない相談をしてくる外国人がいます。
「自分ほど、この事業(製品・サービス)について知っている人はいないし、取引先も良く知っているのだから、会社にとって価値があるでしょう? 独立して会社を作るので取引をして欲しいのです。私が抜けたら、会社も困るのではないですか?」と、従順な家臣の顔をしながら、突然主人に「私がいなくなったら、アナタも困るでしょう?」的な取引を持ち掛けるようなものです。
皆さんの会社ではこのような《提案》に対してどのように対処されますか?
このようなケースの場合、しっかり膝を突き合わせて、相手の話を聴くことです。カ~っとなって怒鳴ったりしないように注意してください。これが「裏切り」なのか、もしくは「なんらかの思い」があるものかを、しっかり聴き取ることが重要です。
特殊ケースのように感じるかもしれませんが、意外に海外(特に発展途上国や元共産圏)ではこのような《交渉》がよくあります。とんでもない提案ではありますが、生きるということに貪欲にならなくてはならない環境が、彼らをそのような発想にさせたのだと感じます。
つまり、発展途上国や元共産圏の国でビジネスを開始する場合、このようなリスクがあることを事前に意識して、対策を講じておくことはとても重要だということです。これは「人」の問題だけでなく、従業員と取引先との間で「裏のコミッション」がないか、厳しくチェックしておくことも重要ですし、役人への「袖の下」も含めて、【蛇の道は蛇】であることを前提にビジネスをすることが求められます。
さて、皆さん。どうします?(^^;)
17.残業を付けてもいいですか?

外国人というと、自己主張が強く、要求ばかりをするという、誤った印象を持った人が多いのですが、アジア圏の外国人の場合、逆に会社との関係が悪くなるとクビになり、帰国しなくてはならなくなると考える傾向があるようで、恐怖心からか、遠慮からか、本人の希望や要求を会社に伝えないことがあります。
場合によっては、具合が悪くても病院にさえ行こうとしません。突然倒れて、救急車で運ばれたケースさえあります。休むと給与が減る、治療費が心配...。家族が日本にいない外国人従業員は、孤独や不安を抱えている人も多くいます。
高度外国人財のカテゴリーに属している奨学金を貰って留学に来ていた人や、親が裕福な人は別ですが、一部には、母国に仕送りすることが目的で日本に来ている外国人も多くいます、会社は配慮が必要です。
皆さんが思うほど、『華麗なる転職』ができる人はあまり多くないものです。
引っ込み思案的な人を見たときに、気を付けなくてはいけないポイントがあります。それは、「遠慮」ならまだ良いのですが、「恐怖心」があるようでしたら、注意が必要だということです。じっくり時間を掛けて取り除いてあげて下さい。
「恐怖心」は、負の連鎖を生む可能性が高いものです。「恐怖」の対義語は「快感」です。快感を求めるために、誰かに恐怖心を持たせたくなる...。
つまり、いずれ背任行為(裏切り)に導いてしまう可能性があるからです。これは、本人が悪いのではなく会社が十分に労わっていなかったことが原因です。
働き方改革で、残業という概念も段々なくなってきていますが、もしも何か「おどおど感」を相手から感じたら家族・安心できる仲間であることをしっかり教えていきましょう。
18.工学部卒の私が、なぜ企画部?

日本企業の場合、学んできたことと、実際の仕事内容が一致しないことが多々
あります。高度外国人財にとっては、それは自分のキャリアを潰されるような
気持ちになるようです。
なぜなら、彼らはその分野の専門性を高めることで、様々な交渉(給与やタイトル)をする文化で育ってきているからです。ところが日本企業の場合、特別な専門分野を除き、「専門家」を作るより「ジェネラリスト」を求める傾向があるため、今までと直接の繋がりがない部署へジョブローテーションをすることがよくあり、それが摩擦の原因になったりします。
これは会社側が、どのように考えているのかを、採用段階で明確に伝えていなかったことが理由です。会社としては、10年、20年単位で物事を考え、最終的には管理職へと育て上げたいと考えていたとしても、本人は、単に自分の専門キャリアを積み重ねていきたいと考えていれば、摩擦が生じるのは当然です。つまり、どんなに優秀な人財であっても、採用すべきではないことになります。
遠くを見ている人と、近くを見ている人は、同じ方向を見ているつもりでも、
見えているモノは全く違うものです。
みなさんの会社では、採用の際に、きちんとその説明がされています?
19.来月退職します。

旅は道連れ世は情け
一緒に仕事をしていた仲間が辞めるというのは、友達をなくすようなもので、悲しい気持ちになりますよね。
会社的には、その仕事を誰かに引き継がせなくてはならず、大変な労力を要します。そのため、必死なって引き留めますが、一度「辞める」と口にすると、居づらくなるのが日本の組織です。
いずれにせよ、辞められたとしても困らない組織(体制)にしていくことがとてが大切です。そして、引き継ぎの手順を準備しておく必要があります。ただ、極端な場合、体調が理由で退職を余儀なくされることだったあるため、手順や準備などで対処できないこともあり得ます。
そのような場合、やはりJobDescriptionのような仕組みはとても価値があると考えるべきでしょう。職務内容や、責任範囲を明確にしておくことで、引き継ぎが容易になる上、仕事におけるダメージを最小限に留めることができます。
とはいっても、明文化したものですべて対処ができるはずもないため、やはりより重要となるのが、日ごろのコミュニケーションです。
また、辞めて欲しくないという気持ちは、相手に伝わるものです。そのため、退職の相談をしたいと思っていても「言いづらい」という気持ちにさせてしまい、結局ギリギリになって話してくるということになりがちです。
それを避けるには、会社主体の人生ではなく、本人主体の人生の中に、仲間と一緒に仕事をする「会社」があるという姿勢を常に持つことです。
また、多くの日本企業の悪いところですが、辞めた人間は「仲間ではない」という態度は厳に慎むべきです。辞めても仲間であるという意識を持った方が、ネットワークが広がります。場合によっては、取引先になることや助けてくれるかもしれないからです。
「旅は道連れ世は情け」。人生という旅の中で、一緒に歩んだ仲間を大切にすることで、困った、困ったという問題を減らすことができます。
20.分かりました。でも、よくわかりません。

ニヤニヤ
不思議なもので、西欧人と接するときには「緊張」し、アジア人と接するときは
「理解し合える」と感じ、アフリカ系の人と話すときは「理解不能」と感じる
日本人が多いと感じます。
その理由は、文化や宗教的な背景にあるのだと思います。昔から、中国の文化や、
仏教・儒教は、アジア全体に広がっていますから共通認識があるからでしょう。
でも、それって日本人が外国人と接するときに見せる「ニヤニヤ」も、彼らにはあるということです。つまり、理解していないけど、その場を流すという「技」です。
分かったような顔をして、適度にうなづいているからといって、相手が理解しているとは絶対に思ってはいけません!つまり、日本人やアジア人の「ニヤニヤ」は、分かっていないというサインだと思った方が良いということです。
伝えたい内容を明確にして、ところどころで理解度のチェックをすることが重要です。
「○○をするにはどうしたらよい?」
「○○を△△にするとどうなると思う?」
「○○がうまくいかなかったら、代案はある?」
等々、様々な角度から質問を投げかけることで、理解度が図れます。
更にこの質問は、新たな気づきを産むことが良くあります。ダイバーシティの気づきです。彼らの頭の中にある「密かな考え」は、私たちにとっては「想像もつかない視点」だったりすることが良くあるからです。
質問をすることでしか、それは見えてこないものです。
確かに簡単に意思疎通ができないことは、とても面倒なことではありますが、宝石の採掘のようなもので、見つけることができれば、素晴らしい輝きを手に入れることになります。
22.外国人をどう使っていいか…

皆さん、遣唐使(遣隋使)ってご存知ですよね。当時の航海技術はまだまだ未熟で、半数が死ぬことを前提にして、倍の人員と船を準備し、国家財政を圧迫するほどの経費を掛けて行いました。もちろん、全員が優秀な人財です。超大国の唐から多くを学ばせてもらうために、献上品も山ほど積んで行きました。
一方で、聖徳太子が、隋に対して
日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無しや、云々...
と書いて、煬帝を怒らせたという話は有名ですが、対等の関係を築くことで、大国に飲み込まれないようにしようとしたのは、アッパレ!と感じます。
遠い昔から、日本は外国から学び、それを礎としてこの国を発展させてきました。
日本は、敗戦後、驚異的な復興をすることで「世界第二位の経済大国」という称号を得ましたが、それは瞬間風速のようなもので、今は老大国のような状態です。
日本は良い国です。自慢が出来る程、素敵な国だと思いますが、しかし、奢っていては埃が積もるだけです。まずは謙虚になることです。
優秀な才能のある人財を活用する
今の環境を軸にして考えるのではなく、あるべき未来、望むべき未来の視点から考えていけば、今すべきことが見えてくるものです。
未来は、スタートレックのような、ダイバーシティでしかありえないのですから...。
職場の皆さんで、今の仕事をどうするかと考えるのではなく、近未来の仕事はどうあるのだろうか考えながら話し合ってみて下さい。すると、今努力しなければいけないこともわかってきます。大切なのは、皆でそれをイメージできるかどうかです。
23.娘は黒人とは付き合わせない!

手塩にかけて育てた可愛い娘が、肌の色の違う人と付き合うなんて、古いタイプの親御さんからすると理解しがたいのでしょう。たぶん親御さんも、恋愛の自由も知っているし、娘が選んだ人なら受け入れてあげたいと、心のどこかでは思っているのでしょうが、拒否反応を抑えきれないのが事実なのだと思います。
別れさせたい、でも娘が言うことを聴かない。
それなら、会社と交渉をして部署を換わらせることで、二人を離したい。それもできないなら、会社を辞めさせてでも別れさせたい。
この手の話には、本来会社が間に入ることではないですが、ご両親の心労を放置することも良くありません。親御さんからすれば、一刻も早くこの難局を終わらせたいと願っているため、即座に返事をよこすように迫ってきますが、それには乗らないで下さい。
聴くことだけに徹する。
ただ、足りないジグソーパズルのピースに気が付くように導く。
お嬢さんがどんな人なのか、今までどのように育ってきたのか、どのようなことが心配なのか、....。
そうしているうちに「ミッシングピース」があることに人は気が付くものです。
基本的には、会社はどちらの味方になってもいけないのですが、聴いている方も「人」です。「人」として、選択をしなくてはならないこともあります。そんな時には、あやふやにせず、真正面から会話をしましょう。
24.母国への寄付金

日本の報道は、どうしても日本国内のことに偏っています。それは視聴者である私たちが、海外に対してあまり興味を持っていないからです。視聴者が望むものしか「視聴率」は取れない、特に民放ではそれが顕著です。お笑いやクイズ番組ばかりですからね...。
でも世界中では、多くの問題が噴出していて、先進国の私たちの支援を待っています。
ベトナム戦争の頃は、ジャーナリストが現地でその惨状を報道することでアメリカ国民の『反戦』意識を高めたそうです。
ところが、今は戦場の情報は国家権力で『規制』が掛っています。そのため、遠くからミサイルを落とすとピンポイントでその『施設』が爆破できる...的な、奇麗な報道ばかりです。でも、実際には誤爆も多くあり、さらにその爆弾で多くの人が亡くなっているはずです。
折角インターネットという誰でも情報発信ができるツールを私たちは手に入れているのですから、積極的に発信をしていくことと同時に、世界に目を向けて、外の世界がどうなっているのかもっと意識を持って知る必要があると思います。
ミャンマーの市民たちは、隠れて様々な情報を発信し、世界の国々に助けを求めています。あの乾いた銃声で、血を流している人が大勢います。普通の市民が、普通の生活ができるように何ができるか、それぞれが考えて、ほんの少しでも行動に起こしていけば、必ず変わっていくものだと思います。
皆さまの会社でも、仕事とは直接関係ないことかもしれませんが、是非、一緒に学び、出来ることを実行して欲しいと思います。
25.え?また引き抜かれた?

従業員を労働力としてみると、できるだけ安く採用し、できるだけ長く働かせることが、資本主義の資本家的な発想になります。ところが、世の中《そうは問屋が卸さない》もので、その労働力を引き抜くために、より高い給与を提示する会社が出てくるのはごく当たり前のことです。
日本はまるでカルテルのように、ほとんどどの業界も新人の給与はほぼほぼ同じです。どんなに優秀でも、どんなに愚鈍でも、同じ給与でスタートします。これはこれで、息の切れる競争社会で熾烈な争いをする訳ではないので、幸せな村社会のような生活が送れます。でも、これは長~い人生を一つの会社組織の中で過ごすことを前提にして、年功序列で、毎年毎年給与が上がっていくということが大前提にあるわけです。
でも、外国人従業員にとっては、その大前提(定年まで勤める、年功序列システム)が元々ない上、自分でキャリアアップを考えることが、彼らの「本能」ですから、入社する段階から、優秀なら優秀なりの評価を会社に求めることになります。
そのキャリアアップを目指す視線は、社内だけに向けられている訳ではなく、他社にも向けられていること、その上、外国人同士の情報網は素晴らしく、単純労働者についていえば、時給が10円違っただけでも、平気で転職をするものです。
皆さまの会社が、業界で常に一番の給与を出せるのであれば別ですが、そうでない場合、どうやってその「芋ずる式の引き抜き」連鎖を止められるか、真剣に考えておかなければなりません。単に、給与が高い会社の悪口を言っていても始まりません。
ホワイトカラーの場合、キャリアップのための転職であることを忘れてはなりません。今の仕事、今の役割が、本人の将来のキャリアにとって重要なプロセスであるという認識を持ってもらうことが大切です。
26.勝手に在宅勤務?!

日本人と比べて、高度外国人財の人たちは、協調性やチームワークといった視点よりも、アウトプット(成果物)を重視する傾向があります。元々、人物評価は一人、一人に行うものだからです。会社の期待通り以上のアウトプットが出せなければ、自分の存在意義を会社に認めてもらえないと外国人は考えます。
人事査定が悪くなると思うと、減給やクビになる前に、自分で居場所(転職先)を探し始めるのが、多くの外国人の考えです。ある意味、日本企業のように従業員は皆「家族」といった感覚とは全く違い、会社も本人も非常にクールな関係にあります。
高評価を受けるため、日本企業で働く高度外国人財はアウトプットにすべてを掛けるのですから、その仕事場がどこであれ、本人にとって最適な場所で行うのが至極当然で、それが職場にないようであれば、自宅であっても全く違和感はありません。ましてや、コロナ禍で在宅勤務に慣れてしまったことで、より集中でき、結果的に高評価を得ることができたとするのなら、元のように通勤時間を掛けて会社に出向く必要性に疑問に思っても当然です。
とは言っても、勝手に在宅勤務をするような部下は、職場の上司にとっては「扱いづらい部下」です。また、他の日本人従業員たちの目もあり苦慮することになります。
いっそみんなで、何が会社にとってベストな就労環境なのか、話し合う機会を作ったらどうでしょう?そして、いろいろと試して、それぞれの会社でベストな方法を模索していけば良いのです。これは争うことではないので...。